2014年1月3日金曜日
そう監督の今更総括(1)
●しえ吉総監督(水戸)
「気づいたらシーズンが終わってました。行く人来る人、まだまだクラブは忙しそうですけど自分は正月休みで温泉に行ってきました。」
―ごめんなさいその情報は要りません(笑) まだまだ流出も加入もありますか?
「あるんじゃないですか。なかったらいいんですけどね(苦笑) 少なくとも小谷野が決まったってことは奴は出るんでしょう。」
―奴というのは?まあいいです(笑) 今日は2013総括ということでよろしくお願いします。」
「またえらいざっくりですね(笑)」
―すみません(笑) では『勝ちきるための課題』ということでお願いします。
「現場の話ですね。その点は自分としてはですね、ここ数年の話だと、実は緩い右肩上がりだと思ってます。」
―ほう。順位は17位(2011)→13位(2012)→15位(2013)得失点差も-9→-2→-8となっていますが。
「内容は向上していると思うんですよ。内容が良くても勝ちきれなかったら評価をされないのがサッカーですけど、先制されても追いつく、勝ち越す、追いつかれても突き放す、あるいは時間帯によって、相手がしんどい所をきっちり突いて得点を奪うなど、『戦えるチーム』になってきていると思います。が、リーグ戦というのは年間通して積み上げてナンボなので、これだけムラがあるとまだまだ厳しいのは間違いない。間違いないんですが、可能性は感じますね。若い連中が勝つために足りないことを真剣に考えてるし、昇格を狙うチームと競る内容のゲームをすることで彼らの本気を肌で感じることができている。チームのDNAには、どのチームを向こうに回してもいい内容のゲームをできるところまでは書き込まれたので、あとは勝ちきる強さをムラなく発揮できるような経験と思いが欲しいですね。」
―昇格圏内、あるいは昇格を至上命題に掲げるチームというのは違いますか。
「資金があれば選手のクオリティが高い、選手のクオリティが高ければ戦術のクオリティも高い。マッチアップの妙や体調など様々な要因で我々にチャンスが生まれるような試合でも、このタレントでどうにかなってしまう。さらに目標がはっきりしていて高いですから、技術がある選手に勝負根性が備わる感じですね。早い時間帯に先制されて相手ペースになると、彼らは流しながらでもウノゼロで勝ちきるだけのマネジメント能力もある。少しでも長く、彼らに本気プレーさせたい。本気でプレーされるのはとてもしんどいけれど、逆に言えばウチが勝つための必須条件となる。結果的に勝てなかったとしても本気で向かってきてもらわないと経験値も上がらないですから。」
―そういう意味では、リーグ戦ではないですが天皇杯の仙台戦なんかは大きな経験になったのではないでしょうか。
「そうですね。あの試合では技術だけではなく、スピードと強さで差がある相手に対して落ち着いて対応し、自分たちのペースに持ち込めた。プロとしてあるまじきミスから失点して勝ち切れなかったのは残念ですが、あそこでバタバタ行かずに立て直せたのも収穫だった。リーグ戦に例えれば昇格の本命にアウェーで勝点1をもぎ取ったということですから。単純な経験値だけではなく、リーグでは長い目で見て許される(格上相手にアウェーで勝点1)ことが、ノックダウンの大会では命取りになるということも書き加えられたんじゃないでしょうかね。40数試合のマネジメントと、90分(120分)のマネジメントの差というか。」
―ゲームのマネジメントということに関してだいぶ前から何度もおっしゃっていますね
「プロとして試合を勝ちきるための最大の要素だと思っています。いくらタレントが揃っていても、1-0でリードしている後半40分過ぎに、とにかく追いつこうと前がかりになっている相手のボールを奪うたびに、リスク管理をせずに2点目を取りに行こうとするチームはないわけです。極端に言えばそれがチームとして徹底されているかいないか。以前、フランク(現山形)がそういう判断ミスをし、後半ロスタイムに追いつかれて橋本とスタンド前で掴み合いをしたことがありました。客前でも憚らずに熱くなってしまうほどの大きなミステイクだったということです。」
―そこが今のチームに足りていないと
「どのチームにもそういう要素はあると思います。広島にだってマリノスにだって、バルセロナでもバイエルンでも。それぞれの立ち位置とかスキルに応じて、必要なマネジメントがあるわけで、それが水戸にもあるということです。そして水戸に足りないマネジメントは、プロのチームとしてはまだまだ初歩的なものだと言わざるを得ない。楽勝でも辛勝でも、勝つことによってしか得られない経験があって、それと先に述べた強いチームを本気にさせないと得られない経験があって、その2つが非常に大きいと思っています。それがまだまだ足りないんですけど、以前よりだいぶ『経験を積めるチーム』になったと思います。」
―以前、水戸にレンタルの選手を送り込む最大のメリットは、出場機会を得られることにありました。そこで経験を積めると。それが現在では、一歩上の経験も積めるようになったとという事でしょうか
「いえ、そこはあまり変わっていないかと。今もウチにレンタル選手を出す最大のメリットは出場機会を得られるということですよ。『チームのDNA』と表現したのはそこで、選手個々の得る経験の質も変わってきてはいますが、そこまでではない。強烈な個性がぶつかり合って、切磋琢磨しながら昇格争いを続けるようなチームではなく、まずチームとして機能し、走り負けないことがベースになって、そこからがスタートのチームですから。そこをきっちり抑えた上で初めて勝ち負けになると言うことを体で覚えたのが2012から2013の夏頃ですかね。そこに足りないものを補って勝点3を手にする確率を上げようともがいたのが秋の10試合勝利無しだったのですが、以前のような絶望感とはまた別の、もどかしいトンネルでした。可能性は感じましたし、徳島や神戸相手に内容で上回ってドローというのは質の高い経験でした。」
―チームとしての経験値ということなら、選手が入れ替わっても問題無しでしょうか
「0ではないですよ(笑) そりゃ、軸になる選手が抜かれれば大きな痛手ですし、取り戻さないといけない部分も出てくる。ですが、全員いなくなるわけではないですし、手にしたものがすべて消えるということはない。強化部もフロントもサポーターも同時に経験値を上げていますから、要求はいい意味で高くなるでしょうし、そうでなければ困る。チームとしてというよりクラブとしての経験値ということになりますかね。」
―ゲームの中でのマネジメントいうことにおいて気になった点は?
「選手のコメントにも散見されたのですが、まずはゲーム中の修正や対応ですね。今年半数近くの試合で、相手チームが明らかに対水戸用のやり方をしてきました。それは水戸というチームの成長の証明でもあるので喜ばしいことなのですが、それに対応できずに落とした勝点は少なくない。相手もプロですから、プライドや慣れたやり方を捨ててでもウチの良さを消しにくれば、当然普段の試合よりもハードになります。そんな時に、例えば前半15分でボランチと2列目の距離を修正したりできればいいのですが、気づいた時には攻め手のないまま失点を重ねていたことが多かった。そこから反攻に出ても流れもプランも相手のものですからね、非常に難しい。前の方で書いたように、そんな苦しい状況を打破する一番簡単な方法は強烈なタレントなんですが、それは水戸は持っていない。それを自覚した上でのゲームプランが必要だと感じたシーズンでした。同じくらい、ゲームの入り方と、ここぞの集中力の大切さも痛感しました。」
―失点に繋がる大きなミスが多かった気がします
「そうですね。以前からミスはありましたが、『あれがなければ』というゲームが多かったので印象に残ったのかな。ポゼッションの質が高くなっているだけに、集中を切らしたときにガクンと緩くなる落差も大きく感じるようになったのかも知れません。それも成長ということで(笑)」
―蹴ってくるチームに対して後手を踏むことも多かったですね
「それも経験不足ですね。想定内であるにもかかわらず対応できないことが多すぎました。中盤の頭越しにサッカーをされると身動きが取れなくなってしまうのは大きな課題ですね。そこであたふたしている内に最終ラインでミスが出て失点というのが多すぎた。来季はもう少し柔軟に対応してくれると思います。勝ち切るための自力はついてきたと思います。あとは柔軟さと経験ですかね。キーマンとしては西岡と冨田を挙げたいと思います。彼らがピッチ上の監督としてタクトを振るってくれれば、世間に一泡吹かせることもできると思います。」
―と言いますと、やはり6位以内ですか
「できたら2位以内で(笑) 今年失敗したんですけど、やはりライセンスの問題を世間に問うには最低でもプレーオフ圏内、できたら自動昇格圏内でフィニッシュしたいですよね。」
―世間に問うと言うのは、やはりスタジアム問題のことでしょうか
「基本的にはそうですね。純粋にチーム力もクラブ力も上げないと、J1でプレーするにはまだまだ足りないんですが、個人的には15,000というキャパでの足切りに大きな疑問を抱いていますので。」
続く
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